南町通はちとややこしい(5)

*ph1:「裁判所前交差点」に在る案内標識
7月南町通・細横丁-07_17_2020-062 (1024x768).jpg
 この写真は、第1回目に掲載した「南町通」の案内標識を別角度から写したものです。このシリーズの発端ともなった案内標識でしたね。この交差点が「南町通」の終端だと思っていたのだけど、この案内標識を見ると、この先も「南町通」が続いていた、という事からこのシリーズが始まったのでした。
 で、この時に私は意図的に隠していたことがあります。
 それは、この同じ位置に別の案内標識があって、そこに表示されていたこの通りの名は「五橋通」だった、という事です。
*ph2:上の写真の部分拡大
TP7月南町通・細横丁-07_17_2020-062.JPG
 このシリーズ、これまで3回に渡りまして回りくどく時代変遷の話をしてきましたので、この通りのこの部分が「南町通」とも、「五橋通」とも呼ばれる理由についてはご理解いただけるものと思います。従いまして、最終回の今日は、何故この様に表示が異なる複数の種類の案内標識があるのか、と言う話をしまして、今シリーズの締めくくりにしたいと思います。







6):仙台市の通りの名称と定義について
 2)~5)で「南町通」の時代変遷を見てまいりまして、その時代背景によって「南町通」の範囲が移り変わってきたことがお分かりいただけたと思います。でも、それでも第1回目の、「南町通の範囲が複数ある」という事の説明には不十分です。時代変遷の最後の段階をもって現在の「南町通」の定義としてもよさそうですよね。でも、そうはなっていません。何故でしょう?
 実は、現在の仙台市の通りの名称・呼称・定義に関しては複数のものが存在するのです。これは仙台市固有の事なのか、他の都市でもそうなのかは分からないのですが…


 道路の正式な名称・定義という事については、これは「道路法」によって定められるものになろうかと思います。高速自動車国道や一般国道については国が政令で定め、国土交通省がこれを管理しますね。都道府県道に関しては都道府県知事が認定(政令指定都市と一部の県では市がこれを行うことがあります)し、その都道府県の担当部署(その都道府県によって部署の呼び名が異なります)が管理をしています。市町村道に関しては市町村の議会で路線が認定され、その市町村の担当部署で管理が行われます。
 これらは、政令によってその区間や管理者が明確に定まっていますので、これを「正式名称」と唱えても良いと思います。南町通で言えば、「市道青葉1165号・南町通1号線」と「市道宮城野1451号・南町通線」という名称がこれにあたります。
 これらは、以下の様な案内標識で示されます。
 (仙台の市街地では単独の国道番号・県道番号標識は見当たらず、以下の様な「方面・方向」と組み合わせた複合標識になります)
   ・ph3:国道標識
8月勾当台公園-08_02_2020-007 (1024x768).jpg
   ・ph4:県道標識
8月勾当台通・北五-08_02_2020-004 (1024x768).jpg
   ・ph5:市町村道標識
 (市街地には市道標識が見当たらなかったので、Wikipediaから拝借してきました)
1280px-Osaki_City_Road(Old_Iwadeyama_Town_Road)Genba_Line_Sign.jpg





 で、仙台市の場合(他の都市にもあると思うのですが)、この他に「通りの通称」や、「通りの愛称」と言うものもあるわけです。それも複数通り。しかも、これらは別々のコンセプトで命名・定義されていて、その表示方法もそれぞれで異なります。

 歴史の古いものから順に列記してみます。
①「仙台市道路愛称名」
   通称「道路の愛称」。昭和22年、河北新報が公募したのが最初。
②「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」に拠って命名・定義された名称
   通称「歴史的町名活用路線」。平成13年、仙台開府四百年を記念として行われた事業。
③「歩行者系案内誘導サイン等整備事業」に拠って設置された案内板に記された通りの名称
   通称「案内誘導サイン」あるいは、「i(アイ)マーク板」。平成12年に計画の同案を、地下鉄東西線開通や国連防災世界会議を控えた平成26年に改訂して実施した事業。

 以下、順に説明して行きます。
①「仙台市道路愛称名」
 前回お話ししましたように、仙台空襲で焦土となった仙台の市街地には新たな大通りが何本か造られたわけですが、その「新仙台」の新たに造られた2本の幹線道路に対し、仙台市の後援を受けた河北新報が紙面上で愛称を公募しました。昭和22(1947)年の事です。
 この時決まった、「元寺小路川内線」を「広瀬通」、「仙台駅川内線」を「青葉通」に、と言うのが「仙台市道路愛称名」の始まりになります。
 その後、東北新幹線開業(昭和57年6月23日)に合わせ、増えるであろう来仙客の便を図り、「道路愛称名」を増やすことにしました。これは昭和56年度から57年度にかけて行われ、市民への公募から有識者や市民代表が選出し、「定禅寺通」、「国分町通」等の15路線の「道路愛称名」が決まりました。
 その後の平成元年、仙台市は政令指定都市になり、五つの区を定めます。これに伴い、平成7年度末、「仙台市道路愛称名実施要綱」を定め、この「道路愛称名」の管理運営は各区へ委ねられることになります。この時に生まれたのが「昭和市電通り」や「宮城の萩大通り」等の19路線(平成28年4月現在)です。

 これらは、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」(内閣府・国土交通省)によって規定された以下の写真の様な道路標識(案内標識)で表示されています。設置者はその道路の管理者です。この案内標識は、その形状によって「始点・終点」、「区間」の別が分かるようになっています。
*ph6,7:「道路愛称名」の案内標識(区間)
7月南町通・駅前-07_17_2020-003 (1024x768).jpg6月晩翠通・大町-06_27_2020-072 (1024x768).jpg
*ph8:「道路愛称名」の案内標識(始点・終点)
7月南町通(元片平丁)・藤坂付近-07_17_2020-092 (1024x768).jpg
 両端がとがっている標識が「区間」中であることを表し、片側が切り落とされた標識の、切り落とされた側の交差点がその愛称名の道路の「始点」もしくは「終点」である事を表しています。
 結構、単純でありながら明快な標識ですね。視認性も良くて分かりやすいと思います。

 ただですね、これもまた私は首をひねる物を見つけたのです。
*ph9:これも同じカテゴリーの標識なのだろうか?
T7月南町通・東二-07_17_2020-032.JPG
 形状はph6~ph7の標識とよく似ていますね。でも色が異なります。しかも、注意深い方は気付いたと思うのですが、愛称名の表記方法が異なっています。ph2やph6の「みなみまちどおり」は、「南町通」と送り仮名の「り」は入っていません。しかしこの標識の表示は「南町通」と、「り」が入っています。
 一般に、仙台の通りの名称に関しまして、その名が通りの名称として十分に固定している場合、「○○通」と、送り仮名の「り」を付けない、というのが暗黙のルールというか、慣習です。その代わりに、一般名詞の「とおり」や、旧町名の中の表通りを示す名称の表記には「通り」や「○○町通り」と、送り仮名の「り」を付けます。例えば、「定禅寺通」は「り」が付きませんが、「東一番丁通り」には「り」が付きます。
 で、「東二番丁どおり」なのですが、これは微妙でして、、、少し前までは「東二番丁通り」と送り仮名を付けて書くのが一般的でしたが、現在は両方あります。仙台市内でも特に交通量が多い幹線道路でして、その名が人口に乗る機会も多い道路ですので、「東二番丁通」と言う書き方も度々見かけるようになってきまして、広く知れ渡り固定化しつつあります。
 ですが、「仙台市道路愛称名」のリストには「東二番丁通」の名は入っていませんし、下の②「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」では『≪東二番丁≫通り』と言う表記になっています。
 今の所勾当台通と東二番丁通だけでしかこの茶色の案内標識を見かけていないのですが、どうもこの案内標識はph1,2・ph6~8の青い案内標識とは別の基準・規格で作られているようです。どのような基準・規格で作られているのかはまだ分からないのですが…
*ph10:茶色の案内標識(勾当台通)
8月勾当台通-08_21_2020-012 (1024x768).jpg

 さて、この①「仙台市道路愛称名」の特徴なのですが、基本は公募や地域団体の要望によって付けられる名称です。ですので、歴史的な経緯を経ていない新しい名称(例えば「晩翠通」、「宮城の萩大通り」等)も半数程度ありますし、区間の定義が十分考証されていないもの(例えば「南町通」、「五橋通」等)もあります。
 しかし、その選定や命名は概ね市民の意識と同調していますので、大して違和感なく受け入れられ、使用される名称だと思います。仙台市の通りの名のスタンダードと言ってよいと思います。


②「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」
 これは以前にも記事にしたことがあったのですが、その後新たな資料も手に入れましたし、改めて書き直してみたいと思います。
 この事業で選定された道路・通りには以下の写真の様な標柱が設置されています。現在77路線に設置されているようです。
*ph11,12:「歴史的町名活用路線」の標柱
9月二番丁通-09_09_2017-035 (1024x683).jpg
7月北山山下通り-07_04_2016-020 (1024x683).jpg
 (ちなみにですが、この標柱の色・茄子紺は、仙台伊達家の陣羽織や旗の色、つまり、仙台藩のイメージカラーです)
 先日手に入れたこの事業の広報パンフレット(コピー)には、
*ph13:「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」広報パンフレットの表紙
歴史的町名活用推進事業」表紙_0001 (722x1024).jpg
この事業の趣旨が以下の様に記されています。
   ・ph14:上の写真の部分拡大
歴史的町名活用推進事業」趣旨2.jpg
 このパンフレットは平成14年度に作られたものです。現在は販売が中止され在庫もありませんでしたので、市役所の1階に在る「市政情報センター」でコピーさせていただきました。
 ちなみに、ここは私が度々利用させていただいている所で、仙台市の刊行物の頒布、閲覧、貸し出しが出来る所です。各区にも同様の施設が在るのですが、私は市役所が近いのでもっぱらここを利用しています。問い合わせの電話番号を以下に書いておきます。
 仙台市役所1F「市政情報センター」022-214-1239:月曜~金曜 9時00分~17時00分 ※休館日:土曜・日曜、祝日、年末年始、第4水曜


 この「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」によって立てられた標柱に記された通りの名は、その趣旨で述べられているように、「旧町名を後世に残す」という事から、『旧町名+通り』や『旧通りの名称』となっていまして、その表記方法もそれを意識した表記になっています。例えば、旧町名を道路の名・通りの通称に活用した路線では、『《北山町》通り』、『《東二番丁》通り』と、旧町名を「《 》」で括り、それに「通り」と言う語を加えています。また、古くから確定していた通りの呼称に関しては、『《勾当台通》』、『《堤通》』、『《狐小路》』と言う様に、通りの呼称全体を「《 》」で括り、送り仮名の「り」を付けていません。
*ph15:「り」が付いていない「《勾当台通》」の標柱
3月勾当台通-03_23_2018-054 (1024x768).jpg
 ところで、このパンフレットの記された全路線の地図の通りの範囲や旧町の範囲は、当時のそれとは異なっている場合が在ります。これはその道路の現況を考慮したためです。
 と、この地図の注意書きに書いてあります。
*Map1:路線地図の部分コピー(南町通付近)
歴史的町名活用推進事業」マップ南町通付近.jpg
*ph16:路線地図の注意書き部分
歴史的町名活用推進事業」注意書き.jpg

 で、今回のシリーズの主題の「南町通」なのですが、①の「仙台市道路愛称名」に指定されている為に、この「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」では選定から外されています。「五橋通」や「西公園通」も同様です。
 そのことはこの路線図と、その凡例の記述で分かります。
*ph17:路線図の凡例
歴史的町名活用推進事業」マップ凡例.jpg
 路線図の緑色の路線が①の「(仙台市)道路愛称名事業路線」である、と書いてありますね。

 しかしですね、この路線図の「南町通」と「五橋通」の範囲なのですが、、、
 第1回目のテーマにもしましたように、①の案内標識が示す「南町通」の範囲は「駅前通」との交差点から「藤坂」の坂上まででしたね。ですが、この案内図が示している「南町通」(緑色の線)は、「駅前交差点」から「国分町通」・「旧・南町」までになっています。
 また「五橋通」も、案内標識が示す範囲は「五橋駅前交差点」から南町通との交差点までですが、路線図の緑の線は「五橋駅前交差点」から「藤坂」坂上までになっています。
 路線図の緑色の線は「(仙台市)道路愛称名事業路線」で、案内標識は「仙台市道路愛称名事業路線」に基づいて立てられているはずでしたよね。二者に食い違いがあるんですよねぇ…、どうなっているんでしょう?
<<These confused me !!>>

 この「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」によって立てられた標柱は、①の「仙台市道路愛称名」を補完する役割と言う捉え方で良いと思います。「仙台市道路愛称名」が、市民に親しみやすい名称を通りの名にする、という事を主眼としていたため、それまで慣れ親しんでいた旧・町名、旧・通りの通称とはかけ離れた愛称になってしまったものも多かった。新・住所表記で旧・町名の多くも失われた。それらを銘記するために行われたのがこの「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」だった訳ですので。
 ですが、何時の時代のものを以て「歴史的町名」とするのか、と言う定義付けや、新・旧の違い(範囲、位置、表記等)をどのように折り合わせるのか、ということが十分にすり合わせされていなかったように思えます。随所に齟齬が見られます。




③「歩行者系案内誘導サイン等整備事業」
 この事業で整備された「サインボード」は、以下の写真の様なものです。
*ph18,19,20:主な通りの交差点近くに設置された「案内サイン」
7月青葉通-07_02_2014-001 (1024x576).jpg8月勾当台通-08_21_2020-002 (1024x768).jpg
3月駅前ペデストリアンデッキ-03_29_2017-168 (1024x683).jpg

*ph21,22,23,24:主要施設・目的とする施設へ誘導する「誘導サイン」
8月勾当台通-08_21_2020-005 (1024x768).jpg5月ペデストリアンデッキ-05_07_2014-096 (1024x576).jpg12月仙台駅西口バスプール-12_18_2017-038 (1024x768).jpg
12月川内-12_28_2015-051 (1024x576).jpg

*ph25,26:その場所の由緒・由来や魅力などを紹介する文を記載した「解説サイン」
5月三の丸-05_07_2015-011 (1024x683).jpg9月大手門跡-09_15_2015-001 (1024x683).jpg

 この他にも、目的の施設の入り口などに設置して、そこが目的の施設であることを示す「記名サイン」。その場所を利用する際の注意事項や禁止事項、マナーなどの情報を提供する「制御サイン」。主に暮らしや催し物等に関する情報を提供する「広報サイン」があり、これらはこの事業によって統一的な規格、システマチックな設置が行われています。

 この事業のコンセプト・基本方針につきましては、仙台市のHPに「仙台市歩行者系案内誘導サイン等基本方針について」と言う項目があり、PDFファイルに全編が収められています。42ページほどの内容です。
 かいつまんでその立案の経緯とコンセプトを書いてみますと、
 『国連防災世界会議(平成27年3月14日~18日)、地下鉄東西線の開業(平成27年12月6日)を控え、国内外から多くの人々の来仙が見込まれる。それらの人々を仙台らしいおもてなしで迎えたい。外国人、障害のある人々も含め、仙台の街を歩く人々に現在地の認識を促し、目的地へ円滑に導くサインシステムを整備する』
と、いう内容です。

 と、いうことで、このサインボードは仙台を訪れた方々、歩行者の誘導に主眼を置いて設置されたものです。だからなのでしょうか、我々仙台人の認識とはズレた通りの名が記されていることがママあります。
 例えば、ph19の写真なのですが、これは北四番丁通角の「仙台銀行上杉支店」前で撮ったものです。仙台人ならほとんどの方がご存じでしょうが、この交差点は「北四番丁通」と「勾当台通」が交わる所です。ですが、この写真の案内サインの通りの名は『東二番丁通り』となっています。この「勾当台通」は藩政時代から続く通りの名で、現在まで一度も「東二番丁」にも「東二番丁通り」にもなった事はありません。確かに「東二番丁」へ通じる道ではありますが、すでに長い歴史を持つ「勾当台通」を押しのけてまで「東二番丁通り」とする理由が分かりませんし、納得も出来ません。
 これと同じ間違いは勾当台公園前の案内サインにもありました。
*ph27:勾当台公園前の案内サインと誘導サイン
8月勾当台通-08_21_2020-007 (1024x768).jpg
 ま、善意でとらえれば、真っ直ぐな1本の通りの途中から名前が変わる、という事が仙台人以外には分かりにくいだろうから、「東二番丁通り」に統一表示した、という親切心とも言えるのでしょうが…
 そんな歴史や民意を無視するようなことはやめて欲しいですね。第一、①の「仙台市道路愛称名」や②の「歴史的町名を道路の通称名として活用する事業」の通りの通称とも矛盾してしまいます。





 と、このように、仙台の市街地には通りの名称を標したものが3種類存在しています。しかも、それぞれが異なるコンセプトで設置されたものであり、通りに対する定義も様々、というか、その定義の基盤がぐらついています。従いまして、「南町通」や「五橋通」といった歴史的変遷が顕著であった通りは、その範囲に対しての定義がまちまちと言ったことになっています。





<後書き>
 良覚院丁公園前の通りが「南町通」なのか「五橋通」なのか、と言う疑問から始まったこのシリーズでしたが、仙台市の観光行政にまで踏み込む、という予想外の展開になってしまい、手こずってしまいました。なので、土曜日にアップする予定だったのが今日になってしまいました。お待ちになっていらっしゃった方にはお詫び申し上げます。
 ところで、この三者の矛盾、私とすれば整理・統合して解消してほしいのですが、、、今となっては無理なのかなあ…

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