前回のクイズの手助けに

 前回のクイズの問題となった文章が古い文章表記でしたし、また小さすぎてスマホでは見づらいのではないかと思い、現代語表記にした文章も用意しました。





 この教科書の文章表記は、標準の日本語表記(現代仮名遣い)が定められる1946年以前のものです。特に、明治初期は、それまで手書きが主流であった文字を活字に置き換えた経緯から、異体字や合字が多く存在しました。はなはだしいのは、同じ字でも印刷所によっては全く異なる字体を使っていることでした。
 また、句読点や引用符号等の使用法も定まっていなかったため、現代人からすると大変読みにくいものとなっています。
 ただ、少しの救いは、初等教育においてはカタカナを主流としている事です。異体字や崩し字が多いひらがなに比べ、カタカナの方が異体字は遥かに少なかったからです。これは、手書き文字・大和言葉のひらがなに対して漢文訓読のツールとしてのカタカナ、の違いからくるものです。





 前置きはこのくらいにしまして、問題文の現代語表記を以下に記します。古字体の漢字や異体字は現代の物に改めましたが、文体はそのままにしてあります。漢字の読みと解説はカッコ内に小字体で記しました。

     第14課  ■■
 ■■は、鼠(ねずみ)、兎(うさぎ)、栗鼠(くりねずみ/リス等の仲間の総称)等の種族にして、北アメリカ及びヨーロッパの湖、河に生息する獣類(じゅうるい/けものの類)なり。からだの大きさは三尺(約90Cm)余りありて、その毛皮は特に価ある(あたいある/価値のある)ものとす。故に毛皮の為に猟獲(りょうかく/猟によって獲物を捕らえること)せらるること少しとせず。毎年アメリカよりヨーロッパに輸出する毛皮は十万以上になりしが、今日(こんにち)に至りては大いに減少したりと言えり。
 ■■は、水陸両棲(りょうせい/両方で生活する、という事)の動物にして、特に奇(き/稀なこと、珍しい事)とすべきは己(おのれ)の家を構造(こうぞう/この場合は造り上げることの意)し、且(かつ)水堰(みずぜき)を建つるの二事(ふたこと)これなり。
 先ず、初めに水堰を建てて、河水の侵入を防ぎ、もって常に同一の水準を保つなり。その水堰の形状は、河流の緩急(かんきゅう)によりて各(かく、おのおの)同じからず。もし、河流緩やかなるときは、これを横断する水堰の方向、常に直線なれども、その流れ急激なるときは、水堰の形状、穹窿(きゅうりゅう/中央が高くて弓状の形状、ドーム型)なるを常とす。これ、水勢を緩和ならしめんが為なり。その水堰を建つるの材料は、■■の噛み切りたる樹枝(じゅし/木の枝)、もしくは泥土(でいど)、小石の類(たぐい)を用うるなり。しかして、その樹枝中には、柳、樺(かば)等ありて、後には根を出して繁茂(はんも)することあり。故に、その水堰を一見するときは水中に生垣あるがごとし。
 ■■の家は、水堰の如くに堅牢なるものにはあらず。その家の中において眠食(みんしょく)すべき所のみは水の侵入せざらんことをつとむ。その材料は水堰の材料と少しも異ならず。その屋頂(おくちょう/屋根のてっぺん)は円形にして、外観あたかも蜂の巣の如し。その壁の厚さは通例五~六尺(1.5m~1.8m)ありという。もし、又数個の■■棲息するに足るべき大屋(だいおく、たいおく/大きな家)なるときは、これを三~四室に区分し、その各室には夫妻双棲(そうせい/二人、二匹で住むこと)して、かつてその隣室に往来せず(”曾不<動詞>”の構文、”曾”は否定の副詞/動作や状態が以前からそのままであることを示す)。又、他より帰るもその室を誤ることなし。
 しかれども、戸外において遊戯し、もしくは他の共同建築を為す時は、相互に協力してきわめて親密なるものとす。
 ■■の歯は、きわめて鋭尖(えいせん/鋭くとがること)なるものして、常に樹枝を噛み切り、もしくは、小さき幹を噛み倒すことあり。而して(しこうして、しかして/そのようにして)これを噛み切りたる痕(あと)は小刀(こがたな)をもって切りたるに異ならず。これらの樹は、その家と水堰とを修復するの用に供し、その樹皮ははぎ取りて食料となすなり。
 その性(せい、さが/性質)たる、ことに細心にして、予防を怠らず。かりそめにも敵の襲い来る等のごとき事あれば、その尾をもって強く水面を打つなり。しかるときは、戸外の■■はこの合図を聞き、ただちに水を潜りて家に帰るとぞ。





 最後に参考までに、ほとんど明治初期の活字にしか見られないカタカナの合字を原本から抜き書きして示します。
  
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 これは、カタカナの「ト」と「キ」を合わせた合字です。「トキ」と読みます。


  
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 これは、上と同様にカタカナの「ト」と「モ」を合わせた合字で、「ドモ」もしくは「トモ」と読みます。反語の意味の時のみ使われ、「共」の意味では使われることはありません。

  
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 これはカタカナの「コ」の崩し字なのですが、カタカナの「コ」と「ト」の合わさった合字として、「コト」と読みます。この字の前文の述部を受ける「(~の)こと」の時に使われます。
 これの右わきに縦棒が付いた「コト」も見たことがあります。

この記事へのコメント

2018年08月15日 07:52
おはようございます。
ヒントの書き直し,力作ですね。
カタカナ合字,初めて知りました。驚きです。
2018年08月15日 08:23
ET先生、おはようございます。

 読んだ通りをそのまま打ち込んだものなので、お褒めにあずかるようなものではありません。かえって恥ずかしくなります。

 カタカナの合字は珍しいと思います。江戸時代の書き文字にもたま~に見つけることはありますが、明治初期の印刷物ぐらいにしか見られないものです。ひらがなの合字の「ゟ(より)」なんかは今でも使われていたりするのですが。

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