こりゃ、間違うよなぁ

*5月19日、ギョウジャニンニクの花の写真を追加しました。

 先日、北山に行った時、覚範寺の境内でちょっと面白いものを撮影しました。下の植物は何かお分かりでしょうか?
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 東北、北海道にお住まいで、お酒をたしなまれる方でしたら、「お、ギョウジャニンニク!」と、お思いになられるでしょうか。
 少し山菜採りに慣れている方でしたら、「む、あぶないぞ!」と、お思いになられるでしょうか?



 実はこれ、スズランの若芽なんです。
*スズラン(鈴蘭):キジカクシ科スズラン亜科スズラン属
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 可愛らしい小さなベル型の花が咲いています。




 で、こちらは、野草園で撮影した山菜のギョウジャニンニク
*ギョウジャニンニク(行者大蒜):ヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属
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 花はまるっきり違うのですが、若芽はそっくりですよね。

<追記>
   ・ギョウジャニンニクの花
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 5月19日に野草園でようやく撮影することが出来ました。花が開いたのはまだこれ1輪だけでした。



   ・ギョウジャニンニクの若芽
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   ・スズランの若芽
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 ギョウジャニンニクは、北海道から近畿の山地に自生するネギ亜科ネギ属に属する、エシャレットによく似た山菜です。北海道では「アイヌネギ」とも呼ばれ、他の地方では「ヤマビル」、「キトビル」等とも言われます。ちなみに、よく似た名前の「ノビル(野蒜)」は同属の別種です。
 4月~5月上旬の2~3葉が出た若芽を食します。北海道では、生のまま、根茎の所に味噌をつけてかじってお酒のつまみなどにしますが、葉や茎を茹でておひたしで食べたり、酢醤油和えや酢味噌和え等にもします。また、餃子の具や卵焼きの具などにするのも好まれます。



 話がちょっと脱線します。
 ヤマビル(山蒜)、ノビル(野蒜)、オオビル(大蒜、ニンニクの事)と、同じようにニンニク臭のする野菜、山菜があります。この「ヒル(蒜)」という語の意味について、山菜を紹介する本などでは『噛むとひりひりと辛いから』と書かれているものが有りますが、これは誤りだと思います。

 「ヒル」については、「蛭」の漢字を当てると元の意味が分かりやすくなります。「ヒル」は、「醜いもの、忌み嫌うもの」の意味の古語で、古事記のイザナギ(伊耶那岐命)、イザナミ(伊耶那美命)の国生み神話に出てくる「ひるこ(蛭子)」にその用例があります。女神であるイザナミから先に声を掛けた(正しくない行い)ので蛭子(ひるこ=奇形児)が生まれた、というくだりです。
 ここから、ちょっと嫌な臭いのする草→「~蒜」、嫌な臭いを体から出す行為→「(屁を)ひる」、嫌なものを体から出す行為→「(糞を)ひる」、忌み嫌う嫌な虫→「蛭(ヒル:環形動物門ヒル綱に属する吸血生物)」等と言う言葉が生まれました。

 ちなみに、後に「ひるこ」は神となり「蛭子神、蛭子命」と書かれ、室町時代ごろには「えびす神(恵比寿・戎)」と混淆されます(共に海の向こうからやってくる神であることから)。すなわち、蛭子→「えびす」と言う訓が生まれ、某タレントの苗字になるわけです(笑)。



 かなり脱線してしまいました。話を戻します。
 スズランですが、スズラン亜科スズラン属に属し、ギョウジャニンニクとは全く別の植物であるのみならず、強心配糖体のコンバラトキシン などを含む有毒植物です。誤って食べた場合、軽ければ嘔吐、頭痛、眩暈で苦しむだけですが、悪くすれば急激な血圧低下から意識を失い、心不全で死亡することもあります。



*スズランとギョウジャニンニクの判別法

 私の手元の山菜の図鑑には、『ギョウジャニンニクは葉の基部が赤茶色の繊維状のもので巻かれているので区別することができます。』と書かれているのですが、上の写真の赤紫色の書き込みのように、スズランにも同様の物(赤茶色の葉鞘)がありますので、これは正しい判別法ではありません。

 先月末に河北新報に誤食の報道と共に載った判別法は、葉の葉脈の違いでした。
   ・ギョウジャニンニクの葉
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   ・スズランの葉
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 スズランの葉脈が根元から葉先まで平行に伸びるのに対し、ギョウジャニンニクの葉脈は中心脈の途中から出て葉先に向かい平行に伸びる、というものでした。
 確かに植物図鑑の図版などで確かめてもそのように見えるのですが・・・・、写真でそれが分かりますかどうか?

 で、それを模式図にしてみました。
   ・葉脈の模式図(筆者の下手な絵)
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 思うに、フィールドでこの判別法は参考程度にしかならないと思います。間違いではないのですが、分かりにくいです。



 一番確かで有益な判別法は、図鑑にも書いてありましたが匂いだと思います。ニンニク臭の有無が一番確かです。勿論、ギョウジャニンニクにはニンニク臭があります。スズランには有りません。





 新聞記事を幾つか調べてみると、ギョウジャニンニクとスズランの誤食の例よりも、イヌサフラン:イヌサフラン科イヌサフラン属との誤食例の方が多いようです。イヌサフランも有毒植物で、時に命にかかわる程の強い毒があります。
   ・イヌサフランの花
     東京都薬用植物園のHPより、以下の写真も同様
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 イヌサフランの場合は、若芽、若葉の頃はさほどギョウジャニンニクとは似ていないので区別が出来そうです。
   ・イヌサフランの若芽
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 イヌサフランの若芽・若葉は多くの葉が重なり、ごついです。


 誤食が起きるのは、芽生え(初出葉)の時です。
   ・イヌサフランの芽生え
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   ・ギョウジャニンニクの芽生え
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 よく似ています。


 山菜採りをよくする人に言わせると、「ギョウジャニンニクとスズランは生えてるところが違うんで、まちがえることなんかねぇべや」なのですが、いくつかの中毒例を見ると、自宅の庭にギョウジャニンニクとスズラン、イヌサフランを共に植えていた場合や、イヌサフラン、スズランを庭植えしていた場合が多いようです。採取の時に紛れやすい環境だったわけです。

 教訓
①山菜採りの時は野草採り(お花摘み)はやめましょう!
②庭にギョウジャニンニクとスズランやイヌサフランを共に植えるのはやめましょう!
③ギョウジャニンニクを採取したら、ニンニク臭を確認しましょう!

      でした。

この記事へのコメント

2016年05月22日 14:14
初めまして・・
本日、鈴蘭の草取りを
して居ましたから良く解りましたが一瞬
コルチカム(犬サフラン)!?
と思ったりしました。

鈴蘭、犬サフラン、(庭)
行者ニンニク(畑)の
植えて居る場所を覚えて居ますから
間違う事が無いのですが
臭いを嗅がないと自信が有りませんね。

気を付けたいです。


あきあかね
2016年05月22日 16:26
たか子さん、ようこそ。

 ギョウジャニンニクと共にスズラン、イヌサフランを庭植えされていらっしゃるんですね。
 もし、そのギョウジャニンニクを食用になされるのであれば、必ずご自分で採取して、匂いも確かめられるようになさった方がよろしいと思いますよ。摘み取った後ですと、格段に判別が難しくなります。私も間違いそうです。

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